岩座神ネット HOME > 岩座神レポート(アーカイブ) > 記事 > 棚田オーナー制度

棚田オーナー制度

千ヶ峰と棚田

岩座神は「日本の棚田百選」にも選ばれた棚田の村です。

1997年から岩座神では「棚田オーナー制度」が始まりました。

「棚田」とはどんなものか、「棚田オーナー制度」とはどういうものか、ちょっと見ていって下さい。

以下は、主として1997年に作成し、1998年、1999年、2002年に若干の加筆を行ったものです。

棚田オーナー制度とは

まじめに農業に取り組み、自然とふれあう勇気を持ち、地域になじめる方または家族に、単に米作りを楽しむだけでなく、美しい景観を誇る岩座神地区をみんなで守っていくことに積極的に協力してもらうために始められた。1区画100平方mで10区画を募集した。会費は5万円。

「加美町への想い」「志望動機」「自己アピール」などの作文を含む申し込みアンケートを書類選考し、10組が選ばれた。

特典として

オーナーの義務は

『広報かみ』1997年6月号より

そもそも、棚田(たなだ)とは、どんなものか

夏の棚田

こんなもんです。写真を見てもらうと一番よくわかる。山肌を切り開いて作られた「段々畑」のような田んぼです。

岩座神には、大小あわせて465枚の棚田があります。

そして、全国棚田サミットに参加した木原博さんの話によると、「岩座神の棚田みたいに石垣がシャキッとして奇麗なやつは珍しいんじゃ」という事です。石垣の高さは平均 2 m、高いところで 5 m。石の組み方などから見て、鎌倉時代にさかのぼるそうです。

ところが、そういう自慢話だけで済むわけでなくて、、、


棚田の農業はしんどい

さすがに、岩座神の棚田とはいえ、今ではほとんどの農作業に機械を使います。それでも、平地の圃場(ほじょう)整備された大きな田んぼにくらべれば、その作業効率の悪さは明白でしょう。大きな機械が使えませんから。

おまけに、山の中のこと、夜中になると、イノシシもシカもタヌキもキツネも出て来る。出て来て、協力はしてくれない。田んぼや畑に入って、作物を食い荒らしていく。動物たちの苦境も知らないわけではないけれど、やっぱり、だめ、困ります。

なぜ、棚田を守りたいのか

棚田と木原課長

棚田の価値として、

というようなことも言われています。だから、守る必要があるんだ、という議論ですね。

農家としては、

という理屈抜きの気持ちも根強くあります。

何よりも、人が住んで生活していく限りは、周囲の環境を手入れの行き届いた状態にしておきたいというのが、ごく当然の願いなのだろうと思います。かつて田んぼであったところが耕作放棄されて山林に呑み込まれ、美しかった石垣が無残にこわれていく様子を見、ゆっくりと村が廃れて行くのを予感することは、現にその地に住んでいる者にとっては、なんとも言えない嫌な気分ですから。


だれか手伝ってくれないだろうか

という訳で、「棚田オーナー制度」が始まったという次第です。

制度の導入については、1995年、高知県檮原町で開かれた「全国棚田サミット」に参加し、全国で始めてオーナー制度を導入した現地の棚田を見学したことが、きっかけになったようです。

このページの最初に掲げたような規約でオーナーを募集したのが、1997年の2月中旬でした。問い合わせの数だけでも、総数200件にのぼり、最終的に応募してきた人は81組にもなったそうです。

これは面白い

棚田オーナーのサイン田植えの指導

5月11日にオーナー田の田植え祭りが行われました。

村中、ほぼ総動員で田植えの指導や手伝いをしたり、ご飯を作ったりしました。(木原も、100人分ぐらいの焼きそばを作ったんですぜ。)

皮肉な見方をすれば、「手伝ってもらわない方が、手間もかからず効率も良いんじゃないの」ということになりそうです。それは、その通りで、田植え機を使えば一人で2時間ぐらいで済むところを、総勢100人ぐらいが半日かけてやってるんだから、純粋な作業効率だけを見れば、何をやってるのかという話になります。

田植えを終えて

ところが、面白かったんですよ、これが。

田んぼに入って泥だらけになって田植えをしたオーナー達も面白かったようだけれど、それ以上に、祭りの準備や世話をした岩座神の住人は、誰に聞いても、「面白かった」と言っています。

岩座神とその自然環境に価値を認めてくれる人が居ること、そして、棚田で農作業をしたいという人が居ること、これは思いがけない嬉しい発見でした。そして、そういう人たちと交流することは、何にもまして、岩座神を活気付けてくれるものでした。


二年目、三年目

1998年5月

二年目の1998年、オーナーの数が20組に増えた。

去年は、最初の年でもあり、まぁ、とにかくやってみよう、という感じだった。採算が合うかどうかよりも、人が来てくれること自体が大切だと、村のみんなが考えていた。いわば、お祭りだ。楽しければ良かった。

今年も、基本的には同じ事なのだけれど、いくらか冷静になって、お互いの利害関係をしっかりと調整しなければならないと考えるようになった。あ、僕が考えているわけではない。のーてんきな僕は、田植え祭りで焼きそばを焼いて、楽しかったと思っているだけ。村の役員さんたちは、この制度を長続きするものにするために、都会のオーナー(借り手)、村の貸し主、村全体の誰もが納得できるような仕組み・方法を作り上げなければならないと考えているらしい。

「来年は30組だ」という積極的な意見もあるが、おおかたは、「20組ぐらいが限度かな」という意見のようだ。

1999年7月

三年目の1999年、オーナーの数は20組のまま。

何組か、オーナーの入れ替わりがあった。最初の年からオーナーを続けている人たちも多い。田植えをするお父さんの背中に負われていた赤ん坊が、今では田圃の中で泥遊びをしたりしている。

去年までは棚田オーナー制度のために町から補助金が出ていたが、今年からはもう出ないのだそうだ。岩座神の棚田オーナー制度は順調に軌道に乗りそうな感じだ。

書籍

日本の棚田 - 保全への取組み

著者:中島 峰広

出版社:古今書院

1999年2月5日発行 240ページ A5判 \3,200

目次

オーナーの一人である箕面市の田中さんから、「こんな本がありますよ」と教えていただきました。

まだ木原は読んでいないのですが、棚田についてまじめに勉強するつもりなら、ちょうど良い出発点になるのでないかと思います。

棚田オーナー制については、高知県檮原町をはじめとする先進地の事例が中心になっていて、岩座神も名前だけは出てくるそうです。

2000年 - 2002年

2000年 - 2002年

岩座神の棚田オーナー制度は、今のところ、順調に運営されている。

棚田オーナー制度をきっかけとして、岩座神の村の様子は、ここ2-3年の間に、非常に大きく変化した。

岩座神は、農村地区としては珍しく「景観形成地区」としての指定を受けた。

また、補助金を得て、生活道および農道や用水路を整備することが出来た。今年度には、田の畦の整備も予定されている。

さらに、今年の春には、滞在型市民農園施設「クラインガルテン岩座神」というものがオープンした。

そして、岩座神は、いつの間にか、棚田の先進地域としてけっこう有名になり、いろんな所から視察者が訪れるようになった。

棚田オーナー・アンケート

西脇農業改良普及センターが、1997年、1998年、1999年に棚田オーナーだった人たちに対して、アンケート調査をして、その結果を 2001年1月に発表している。

非常に面白いので、是非、読んでいただきたい。

1997年7月作成 / 2002年8月更新

© 1997 - 2002 岩座神レポート